結構好きなんですよ、ギャング物って。「ゴッド・ファザー」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」とか。この映画は前述の二作品に比べるとやや感傷的な感じ。ずっと以前に観た、同じくダニエル・デイ・ルイスが出てる「エイジ・オブ・イノセンス」もこんな感じでした。大がかりな映画を手がけると少々緊張感に欠ける気がします。「タクシー・ドライバー」はそんな事なかったんですが。都市の夜の濃密さ、深さが良く描かれていて、もう路地の匂いまで嗅げるくらいにリアルでした。話が逸れましたが、この映画も冒頭でいきなり集団での殺戮合戦が映し出されるものだから、観ていてどうしようかと思いました。

 ケチを付けてばかりでは話が面白くないですね。この映画の舞台は19世紀のニューヨーク。港には頻繁にアイルランドからの移民を乗せた船が着き、南北戦争で国は荒廃し、中国人のコミュニティーは既に各所に存在し、混沌と暴力が街や社会を形成する僕達には縁遠い世界の話です。こういうのはワクワクします。物語の主軸は父親の敵討ちなのですが、正直僕はそんなのはどうでも良くて、混沌の中の人間の正直さ・愚かさを観ていられればそれでOK。この映画の最大の収穫はそこでしょうか。