近・現代の福博と福博町人を知るのに「紙與呉服店」(現在の紙与産業の前身)の歴史は避けて通れない。福岡市の中心部、天神から電気ビルまで、山手に向かって伸びる大きな通りがある。道沿いには、デパート、西鉄福岡駅、ホテル、銀行などが林立する福博のメーンストリート「渡辺通り」である。
 この通りの呼称が福博の道路建設や九州大学誘致、博軌電車(現在の西日本鉄道の前身)の施設、博多絹綿紡績会社の設立などに尽力した渡邉本家三代目当主、渡邉與八郎氏にちなんだものである、といえば、その存在の大きさの一端はわかっていただけるだろう。

朝日新聞福岡本部編『博多町人と学者の森〜はかた学6〜』葦書房 1996年 p.40