ホ・ジノ監督の八月のクリスマスに続く二作目。こちらはハッキリと恋愛物だが、やはり同じように所謂ハッピーエンディングにはならない。何となく、これはこれで良かったのかなあ、という感じで終わる。ま、それはいいとして。この映画で二つ好きな場面があって、一つは、主人公の二人が最初に出会う場面。未だ見ぬ二人が仕事の関係で駅で待ち合わせをする。録音技師の男は約束の時間に駅の待合室へ辿り着くも、相手の顔を知らないので戸惑う。しかしどうやらマフラーを顔に巻き付けてベンチに座って寝ているのが、待ち合わせの相手であるラジオのDJ兼プロデューサー当人であるようだ。男は敢えて肩などを叩いて起こそうとはせずに、隣で眠る女の携帯にそこから電話する。僕はこの場面が大好きである。
 もう一つは、二人が付き合うようになって、遠く離れて暮らしている為なかなか逢えず、酔った勢いでタクシー飛ばして男が女の住むマンションへ逢いに来る。予め電話を受けていた女は、マンションの外へ出て恋人が遠路遙々駆けつけるのを待っている。が、この人、道路に座り込んでグッタリとしながら待っているのである。まあ、待ちくたびれたのだろうけど、その姿がとても愛らしくて良い。
 あ、もう一つ在った。二人が番組の為に竹林が風にさざめく音を録る場面があるのだけれど、その竹のさざめく音がとても良いのである。其処に長年済んでいる老婆は「この音を聴いていると心が軽くなる。」と言が、まさにそんな音。