村上:なんでまた現代美術なんかやり始めちゃったのですか?

蓑:たまたま金沢市長が呼んでくれたから。まあ、もともと現代美術は好きでしたから。普通、自分の専門外のものは分からないと言いますが、一つのものが分かれば、いいか悪いか一緒だと思いますよ。
 古いものを見てきて感じるのは、現代美術もそうなんだけれど、だいたい、昨日出来たようにきれいなものが本物ですよ。下手に古そうに見えるやつは危ない。

村上:危ない?(笑)

蓑:いいものというのは、ほんとにフレッシュですよ。

村上:そうですね。そうなんですよねえ。

蓑:現代美術と一緒ですよ、そこは。そこが皆さん分からない。なにか真新しいから駄目だというのですよね。最後に私が突き詰めた結論がそうです。昨日出来たみたいなやつのほうが、よっぽどいい。

村上:前に僕は志野焼のよびつぎ茶碗を買ったのです。ずいぶん高いものでした。それを骨董の分かる人に見せたら、「うわ、汚い、何これ。いくらで買ったの?」と聞くのでむむむ円と言ったら「高い勉強代ですね」って。じゃあ、って言うんで本物の志野焼を見せてもらったら、うわっ、ほんとだ、全然フレッシュ。今、釜から出てきたみたい。
 いいものとはどういものか、今日は教えてもらいました。昨日出来たものみたいなのがいいんですね。

蓑豊著『超・美術館革命ー金沢21世紀美術館の挑戦』角川oneテーマ21 2007年 pp.170-171