アートの歴史といっても、ようするにファッションと同じように、さまざまなトレンド、ブームの連続だという話は先ほどしました。ウォーホールの描くマリリン・モンローが芸術としてある程度行き渡ってしまった後には、今後はそんなアートもつまらないということになり、ミニマルアートとか、あるいは地球とか大地とかをモチーフにしたランドスケープアートというのもありました。いずれにせよ、一回ブームがくるとすぐつまらなくなるわけです。そこは株の投資とかファッションのムーブメントとまったく同じです。
 アートの世界にも同じようにピークと衰退があります。歴史というほど大げさではなくとも、過去の流れを学習しておくと、次、こういうのが来るのではないか、そういえば、今、来ようとしている「これ」は、以前あった「あれ」の引用ではないのかとかをコンテクストとして理解する。それが知的とされるのが現代美術のシーンです。

村上隆著『芸術闘争論』幻冬舎 2010年 p.94