村上:日本の美術館とアメリカの美術館との大きな違いは何でしょうか?

蓑:日本の場合は公立で、市民の税金でまかなわれている美術館が多いですよね。外国では皆さんから集めた寄附で運営している美術館が主流です。街全体が、皆さんお金を出してくれるのですよ。もちろん、入場料のほかににですよ。企業も出すし、個人も出す。だからみんな美術館を自分たちの誇りだと思っている。
 どうも日本の場合は、あれはお役所が建てたものだという意識があって、あまり親しみを感じない。これが一番大きな違いじゃないかな。

村上:日本の美術館は寄附を受け付けないのですか?

蓑:税制がね。寄付してもらっても中央に言っちゃいますから。役所に行っちゃうとか。

村上:そこを変革する必要がありますね。

蓑:それが一番大事。財務省が本当に税制改革しなかったら、日本の文化は育たないと思う。私が言いたいのは、阿部総理が掲げた「美しい国」ですよ。これだけの文化国家で、しかも大国なのに、そこに「文科省」がないというのは、これは大きな欠陥ですよ。

村上:防衛省はできたのですからね。

蓑:防衛省は作っても、文科省はないんですよ。それぐらいないと、日本の文化は育ちませんよ。皆さんが文化にお金を出したって税金で取られるなら、これは誰も出しませんよ。

村上:芸術にとって、未来があるんですかね、日本って。

蓑:文科省をつくれば未来はあるね。文科省を作れない国家だったら、文化は育たない。

村上:なんでないのですかね。こんなに潜在的な文化は豊なのに。今、海外からの日本への旅行者がすごく多いじゃないですか。これは何なのかとずっと思っていたのですが、やっぱり、平和な国だからだと思うんです。六十年以上も平和な国だったということと、安全ですよね。安全というのはすごいブランドだし、食べるものもおいしいし、街もきれいだし、どこへ行っても風光明媚ですよね。ブランドの塊みたいな国なんだけれど、文科省はない。

蓑:ない。おかしい。これが売り物になるのに、しない。

蓑豊著『超・美術館革命ー金沢21世紀美術館の挑戦』角川oneテーマ21 2007年 pp.172-174