何だか夢をよく見るようになってしまった。と言っても印象的なものは1・2週間に一度くらいだけど、以前は殆ど見なかったのでそれと比べれば頻繁に見ているように感じる。原因は最近睡眠時間が安定していないからだろうか。それとも陽気のせいだろうか。
 今回は少し長いので二度に分ける。夢見ていた時間は短いし、相変わらずイメージが散漫なのだけれど、それを無理矢理繋げていたら長くなってしまった。取りあえず記しておく。

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 目を覚ました時、僕は雑魚寝状態の和室の部屋で布団にくるまっていた。和室と言えども入口は一つで、8畳ほどの部屋の突き当たりから右に折れるようにまた8畳が在る、不思議な間取りの部屋であった。僕は丁度曲がり角に当たる部分に寝ており、近くにはブラウン管の小さなテレビが在った。外はまだ暗く真夜中であるようだ。僕は再び目を閉じる。

 半覚醒の僕の耳に、何人もの人が何度も部屋を出たり入ったりしている物音が聞こえた。

 くぐもった人の声が小さく聞こえる。薄目を開けると、人工的な光が目を打つ。誰かがテレビを観ているようだ。しかもその音声から察するにアダルトヴィデオのようである。迷惑に思いながら僕は被っていた布団を引き剥がした。意外な事にアダルトヴォデオを観ているのは女であった。

「あの・・・」

「なに?」

「なんでそんなの観てんの?」

「さあ」

 女は20歳を少し過ぎたくらいだろうか。短い髪の毛、額に垂れた前髪の奥の眼差しは半ば閉じていた。僕は画面に目を遣る。そこには隣にいる女と同じ顔の女が喘ぐ姿が映し出されていた。

「ねえ、これ君なの?」

「そう・・・去年のわたし」

「そう」

 僕はそこまで訊いたところで急に眠けを感じ、布団を被り再び目を閉じた。

 –

 再び目を覚ますと、女が同じ布団で寝ていた。僕は女の身体を引き寄せ、そのまま眠りに落ちた。
 –
 閉じた瞼の向こうに明るさを感じ、目を開ける。朝のようだ。傍らに女の姿はない。起き上がって部屋の中を見廻すと、布団に埋もれた人の身体が点在する。起きて身支度をしなければ。これから何処かへ行く当てがあるようには自分自身思えなかったが、とにかく此処を出なくてはならないようだ。僕は脱ぎ捨ててあったジーンズを穿きネルシャツを羽織って、デイパックに荷物を詰め始めた。
 すると、部屋の反対側で同じように荷造りをしていた男が声をかけてきた。

「なあ」

「なに」

「おまえと一緒に寝てた女、連れか?」

「いや、違う」

「じゃあ何だよ」

「知らないよ」

「何だそれ。ちぇ。まあいいや」

 僕が荷物を持ち立ち上がって部屋を出て行こうとすると、先ほどの男が再び話しかけてきた。

「あのさあ、あの女、俺前にも見た事あるぜ」

「この町で?」

「いや、此処じゃない。もっと西の方」

「何してた?」

「なんかなあ、繁華街だったんだけど、暴れてた」

「暴れてた?」

「そう。最初酔ってるのかと思ったけど、そうでもなさそうだった。とにかく絡んでくるおっさん達相手にまともに立ち回ってたよ。そこら辺にある物片っ端から投げつけたりしてさ、走り回ってた」

「ふうん、何だろな」

「何だろうなー。でも、もう関わらない方が良いかもよ? 何だかジャンキーっぽいし」

「そうかな?」

「ああ、そう思うね」

「詳しいね」

「似たようなの何人も知ってるからな」

「そうか」

「そうだよ」

「ありがと」

 僕は部屋を出て玄関まで歩いた。ひどく安普請な旅館で、何故こんな所に泊まろうと思ったのかまるで思い出せない。そして玄関を出て表の通りに差し掛かったところで携帯電話が鳴った。