先日、博多座にて「伊達の十役」を観てきた。歌舞伎を久しぶりに鑑賞する事が出来たというのもあるが、博多座に入るのも初めての経験であったので、色々と楽しむ事が出来た。
 そしてこれは今回に限らず、歌舞伎を観覧すると毎回思う事だが、とにかく三味線の音色に関心させられる。歌舞伎の伴奏音楽なので清元だと思うのだが、華やかで、軽やかで、乾いた音を出すかと思えばまとわりつくような感じを受ける事もあるし、三味線は本当に心地の良い音を出すのだなあと思いながら聴いていた。あまりに伴奏に気を取られて台詞を聞き逃してしまったりもする。しかしどうしてこんなにも心地良く聞こえるのか、その訳を知りたいものだと考えながら眺めていたのだが、よく判らない。劇場で聴くと、音は曲線的に聞こえる。一音一音が弧を描き、それらが連なると揺れながらくるくると回転し始める。大袈裟かも知れないが、僕にはそのように聞こえるのだ。

 例えばこの動画。歌舞伎の時とは配置が違うが、演奏しているものは大体このようなものだ。しかしこれでは、現場で聴いた時のように音に広がりがないし、あの幸福感のようなものが感ぜられない。ちゃんとした録音ではないから仕方がないけど、これは CD で聴いたらちゃんと聞こえてくるのだろうか。清元を CD で聴いた事はないので何とも言えないが、何となくだけどあの感覚は再現されないんじゃないかと思う。演者と視聴者との距離などがきちんと配慮された劇場の音響設計があってこそではないだろうか。僕の場合は三味線だけが殊更に美しく感ぜられるが、他の楽器や歌唱も特別な音質として聞こえているのかも知れない。
 あと考えられるのは、その場に自分が居る事の昂揚感も手伝って良く聞こえているのだろうという事。他のジャンルの音楽のコンサートでも、演劇の舞台でも、スポーツ観戦なんかでも、現地に身を置くという事がより強い印象を植え付けていると思うので、その点は致し方ないと思える。一応 CD を買って聴いてみようとは考えているが、それで満足できないとなると、あの音色を聴くためには劇場に足を運ぶしかない。

 とこんな事を書き連ねていると三味線しか聴いていなかったように読めるが、そんな事はなく舞台もちゃんと楽しんでいたので、次の観劇を楽しみにしているのである。それがいつになるのかは判らないけど。