全小中学生を招待して彼らの反応を観察したとき、私は感じたことがあった。やっぱり一、二年生では、まだ集中力がないので、ここで作品に触れたことをあまり覚えていないだろう。五、六年生もダメ。中学になったらもっとダメになる。なぜか。五、六年生になると、異性に興味を持ち始めるからだ。美術館に来ても、好きな異性ばかり気になって、作品を見るどころではない。
 だから小学四年生、十歳なのだ。これは私の観察から得た私なりの結論だったが、学校の先生はみんな知っていることだと判った。教えるのは四年生が一番ラクだ。なぜラクかというと、四年生というのは何でも興味を持つころなので、何を教えても吸収していけるからなのだという。そのために、どの学校でも、低学年や五、六年生に力のある先生を配置し、四年生は凡庸な先生に担当させる傾向があるという。私に言わせれば、四年生にこそクリエイティブな先生を担任にしてほしい。そうすれば、日本の学校は絶対に変わるはずである。

蓑豊著『超・美術館革命ー金沢21世紀美術館の挑戦』角川oneテーマ21 2007年 p.114